子どもが小さいうちは、「正社員を続けるのは大変だからパートになろうかな」と考えることがあるかもしれません。たしかに勤務時間が短くなれば、送迎や家事との両立はしやすくなります。
ただし正社員からパートへ変わると、給与だけでなく社会保険や賞与、将来の働き方まで変わる可能性があります。
退職届を出す前に、まず一度整理してみましょう。
※本記事は2026年10月20日時点で確認できる公的情報をもとに作成しています。
まず会社の両立支援制度を確認する
2025年10月から、3歳から小学校入学前までの子どもを育てる労働者に対して、会社は柔軟な働き方を実現するための制度を複数用意することが義務付けられています。
具体的には、時差出勤、テレワーク、保育施設の設置・運営等、養育両立支援休暇、短時間勤務の5つから、2つ以上を用意する必要があります。
また、3歳未満の子どもを育てる労働者については、原則として1日6時間の短時間勤務制度を利用できる仕組みがあります。
2025年4月からは、小学校入学前の子どもを育てる労働者について、残業免除を請求できる制度の対象も拡大されています。
「正社員では続けられない」と考える前に、人事担当者へ「正社員のまま利用できる制度はありますか?」と確認してみましょう。
勤務時間を調整するだけで、正社員として働き続けられる可能性もあります。
パートでも社会保険に入る場合がある
「パートになれば配偶者の扶養に入れる」とは限りません。
2026年10月1日から、短時間労働者の社会保険加入要件のうち、月額賃金8万8,000円以上という条件が撤廃されました。
2026年10月20日時点では、従業員51人以上の企業などで働く短時間労働者について、主に次の条件を満たす場合、健康保険・厚生年金への加入対象となります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・学生ではないこと(一定の例外あり)
・2か月を超えて雇用される見込みがあること
※従業員数は、原則として厚生年金保険の被保険者数などを基準に判定します。また、企業規模にかかわらず、通常の労働者の所定労働時間・日数の4分の3以上働く場合などは、社会保険の加入対象となります。
これまで「106万円の壁」と呼ばれていた賃金要件がなくなったため、今後は年収だけでなく、週に何時間働くかが重要になります。
さらに、企業規模の要件も段階的に縮小されます。
2027年10月からは従業員36人以上、2029年10月からは21人以上、2032年10月からは11人以上、2035年10月からは10人以下の企業にも適用が拡大される予定です。
これからパートになる場合は、古い「106万円以内なら扶養に入れる」という考え方だけでは判断できません。
扶養に入る場合は130万円の基準も確認
勤務先の社会保険に加入しない場合、配偶者の健康保険の被扶養者になれるかを確認することになります。
一般的に、社会保険の扶養では年間収入130万円未満が一つの基準となります。
2026年4月からは、労働契約の内容に基づいて見込まれる年間収入が原則130万円未満で、ほかの収入が見込まれず、生計維持などの条件を満たす場合、原則として被扶養者として認定する取り扱いが始まっています。
これにより、残業などで一時的に収入が増えた場合でも、労働契約上の収入見込みなどから扶養認定を受けられる可能性があります。
ただし、勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合は、年収130万円未満でも原則として自分で社会保険に加入する必要があります。
また、税金の扶養と社会保険の扶養は別の制度です。
税金には配偶者控除や配偶者特別控除などの仕組みがあり、社会保険とは基準が異なります。
さらに、勤務先によっては配偶者手当や家族手当の支給条件に収入基準を設けている場合もあります。
「年収を○万円以内にすれば全部得」と単純には考えず、自分の勤務先と配偶者の健康保険、勤務先の手当制度まで確認しておきましょう。
月給以外に失うものがないか確認する
正社員からパートになると、会社によっては次のような待遇の扱いが変わります。
・賞与
・退職金
・住宅手当
・家族手当
・昇給制度
・福利厚生
時給だけを比べるのではなく、年間で受け取れる金額と待遇全体を見ることが重要です。
ただし、パートになったからといって、すべての待遇を会社が自由に引き下げられるわけではありません。
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパートタイム労働者などの間で、基本給や賞与、各種手当などについて不合理な待遇差を設けることを禁止しています。
待遇に違いがある場合、労働者は会社にその内容や理由について説明を求めることができます。
パートへ変更する際には、給与だけでなく、賞与や退職金、福利厚生などがどう変わるのか、事前に書面などで確認しておくと安心です。
一度パートになると正社員へ戻れるとは限らない
子どもが小学生になったら正社員へ戻ろうと思っていても、同じ会社で簡単に戻れるとは限りません。
勤務先によっては正社員への転換制度を設けている場合もありますが、希望すれば必ず戻れるというものではありません。
再び就職活動が必要になる可能性もあります。
また、パートとして働く期間が長くなれば、仕事内容や経験できる業務が変わり、その後のキャリアに影響することも考えられます。
今後どの程度働きたいのか。子どもが10歳になったころ、自分はどんな仕事をしていたいのか。
少し先まで考えてから決めても遅くないと思うので、焦らずにしっかりと考えましょう。
「今の大変さ」だけで退職を決めない
幼児期は送迎や急な発熱があり、仕事と子育ての両立が特に大変な時期です。けれど、その状態がずっと続くわけではありません。
短時間勤務。時差出勤。テレワーク。有給休暇。子の看護等休暇。家族との分担。
使える制度を一度すべて確認してから、それでもパートの方が家庭に合うなら働き方を変える。
また、正社員からパートへ変更する場合でも、いったん退職する必要があるのか、同じ会社で雇用形態を変更できるのかによって、手続きや待遇が変わる場合があります。
退職届を出す前に、社内で働き方を変更できないか相談することも大切です。正社員を続けることだけが正解ではありませんし、パートを選ぶことが間違いでもありません。
ただ、働き方を変えることで家計や将来にどのような影響があるのかを知っておくことは大切です。
子どもとの時間も、自分自身のこれからの人生も、どちらも大切なもの。
大きな決断となるので、まずはその順番で考えてみましょう。
参考にした主な公的資料
- 厚生労働省「柔軟な働き方を実現するための措置」
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」
- 厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法とは」
※社会保険の加入条件や被扶養者認定、勤務先の給与・賞与・福利厚生制度などは、個々の労働条件によって異なります。最新の制度内容や具体的な適用条件は、勤務先、加入する健康保険、年金事務所などで確認してください。
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