ニュースを見ていると、お金に関係する事件がたくさん出てきます。
振り込め詐欺。投資詐欺。強盗事件。会社や人のお金を勝手に使ってしまう横領事件。
時には、お金のトラブルをきっかけに、人の命が奪われる事件まで起きています。
「どうして、こんなことが起きるのだろう?」そう思ったことはありませんか。
こうした事件を「自分たちには関係のない話」と考えてはいけないと思います。
これから子どもたちが成長し、自分でスマートフォンを持ち、お金を使い、アルバイトや仕事を始めるようになれば、さまざまなお金の話に出会います。
大切な子どもたちが、被害者にも加害者にもならないためにも、お金にまつわるトラブルについて、親子で話す機会を持つことは、とても大切だと思うのです。
お金は人を幸せにも、不幸にもする
お金があれば、おいしいものを食べたり、好きな場所へ旅行したりできます。
学びたいことを学び、病気になった時に治療を受けることもできます。困っている人を助けたり、誰かの夢を応援したりすることもできます。
ですから、お金そのものが悪いわけではありません。
お金は、私たちの暮らしを支え、人生を豊かにしてくれる大切な道具です。ただし、使い方を間違えると、人を傷つけることもあります。
包丁が、料理を作るためにも使えれば、人を傷つける道具にもなってしまうのと少し似ています。
大切なのは、お金そのものではありません。そのお金を、どのように得て、どのように使うかということなのです。
だまされるのは、知識のない人だけではない
「そんなの、自分はだまされない」・・・そう思う人は多いかもしれません。
しかし2025年の特殊詐欺およびSNS型投資・ロマンス詐欺の合計被害額は、警察庁が把握しているだけでも約3257億円にのぼります。
このことから考えても、実際には、社会経験のある人や、普段はとても慎重な人でも、だまされることがあるという事です。
なぜなら、詐欺をする人たちは、お金の知識だけではなく、人の気持ちにつけ込んでくるからです。
「今すぐ振り込まないと大変なことになる」
「絶対にもうかるから、今日中に決めた方がいい」
「家族が事故に遭った」
「この話は、誰にも言わないで」
そんな言葉で相手を焦らせたり、怖がらせたり、特別な人に選ばれたような気持ちにさせたりします。
人は焦ると、普段なら気づけるような不自然さにも、気づきにくくなります。
家族を助けたいという優しさ。損をしたくないという気持ち。生活を少しでも楽にしたいという願い。人に迷惑をかけたくないという思い。そうした、誰にでもある普通の感情が利用されてしまうのです。
だから、「だまされる人が悪い」と簡単に決めつけてはいけません。
大切なのは、自分もだまされる可能性があると知り、その場で一人だけで判断しないことです。
子どもが犯罪に利用されることもある
お金のトラブルというと、大人や高齢者が被害に遭うものだと思うかもしれません。けれど、子どもや若い人が巻き込まれることもあります。
「荷物を受け取るだけで、お金がもらえる」
「銀行口座を貸してくれたら、お礼をする」
「スマートフォンを契約して渡してほしい」
「簡単な仕事で、すぐに高い報酬がもらえる」
「友達を紹介すれば、さらにお金が入る」
最初は、ほんの少しのお手伝いのように見えるかもしれません。
けれど、その荷物が犯罪に関係するものだったり、貸した口座がだまし取ったお金の受け取りに使われたりすることがあります。
本人は「知らなかった」と思っていても、犯罪の一部を手伝ったと見られてしまう可能性があります。
「簡単に稼げる」
「何もしなくてもお金が入る」
「誰にも言わなくていい」
そんな話を聞いた時こそ、立ち止まらなければいけません。
お金は本来、誰かの役に立ったり、価値を届けたりした対価として受け取るものです。
仕事の内容をきちんと説明できないのに、高い報酬がもらえる話には、何か理由があると考えた方がよいでしょう。
「うまい話」は、一人で決めない
世の中には、「絶対にもうかる」「必ず成功する」「今だけの特別な話」という言葉があふれています。
けれど、世の中に絶対に安全な投資や、必ず成功する方法は、ほとんどありません。
もし本当に、誰でも簡単にもうかる話があるのなら、なぜその人は知らない相手にわざわざ教えてくれるのか。そんなふうに、一度立ち止まって考えてみることが大切です。
少しでも「おかしいな」と感じたら、その場で返事をしない。
電話なら、いったん切る。メッセージなら、すぐに返信しない。
お金を払ったり、個人情報を伝えたりする前に、家族や信頼できる大人へ相談する。
急がせる人ほど、急いで答える必要はありません。本当に正しい話なら、考える時間や、誰かに相談する時間を与えてくれるはずです。
お金を失うより怖いこと
詐欺やお金のトラブルに遭った人の中には、「だまされたと知られるのが恥ずかしい」「家族に怒られるかもしれない」「自分で何とか取り戻さなければ」と思い、誰にも相談できなくなる人がいます。
そして、失ったお金を取り戻そうとして、さらに別のお金を支払ってしまうこともあります。
でも、本当に大切なのは、失ったお金を隠すことではありません。自分の生活や、これからの人生を守ることです。
お金は、また働いて得ることができるかもしれません。けれど、一人で問題を抱え込み、心や体を壊してしまったり、さらに深い犯罪へ巻き込まれたりしては、取り返しがつきません。
家族や友達との信頼も、お金では買うことができません。
だからこそ、困った時には、できるだけ早く誰かに相談することが大切なのです。
親子で決めておきたいこと
子どもをお金のトラブルから守るためには、「怪しい話に気をつけなさい」と言うだけでは足りません。
どのような時に相談するのか、家庭の中で具体的な約束を決めておくとよいと思います。「今すぐ」と言われても、その場では決めない。
お金や銀行口座、暗証番号に関することは、一人で判断しない。
家族の事故やトラブルを知らされても、いったん連絡を切り、本人や家族へ確認する。
「誰にも言わないで」と言われたら、必ず誰かに話す。
少しでも不安を感じたら、取引や仕事を始める前に相談する。
そして何より大切なのは、「失敗しても怒らないから、できるだけ早く話してね」と伝えておくことです。
子どもが相談できない理由は、だまされたことそのものより、親に叱られることが怖いからかもしれません。
責められると思えば、子どもは隠します。一緒に考えてもらえると思えば、早く相談できます。
契約書は複数の目で確認する
我が家には、もう一つ約束事がありました。
契約書など、印鑑や署名を求められる書面は、必ず複数の人の目で確認するということです。
スマートフォンを契約する時も、自立して家を借りる時も、契約書を交わします。
契約書には小さな文字がたくさん並び、最初から最後まで読むのは大人でも大変です。
それでも一緒に読み、分からないことがあれば、そのままにせず質問し、納得してから契約する習慣をつけてきました。
先日も、長女が引っ越しをすることになり、契約書にサインをする前に、「自分でも確認したけれど、念のため見てくれる?」とPDFが送られてきました。
大人になったからといって、何もかも一人で決めなければならないわけではありません。大切な契約ほど、誰かに確認してもらう。分からないことを、分からないままにしない。
そうした習慣も、自分のお金や生活を守る力になります。
そして、日頃から何でも話せる親子関係をつくることも、大切なお金の教育なのだと思います。
お金の勉強は、自分を守る勉強
算数や国語を学ぶように、お金について学ぶことも大切です。
お金の仕組みを知っていれば、怪しい話の不自然さに気づきやすくなります。
ただし、知識があれば絶対にだまされないというわけではありません。
疲れている時。悩んでいる時。急がされている時。
人は誰でも、冷静な判断ができなくなることがあります。
だから必要なのは、お金の知識だけではありません。
その場ですぐに決めないこと。
相手から、いったん離れること。
そして、一人で抱えず誰かに相談すること。
お金の勉強は、単に貯金や計算を学ぶためのものではありません。将来の自分の生活と、大切な人を守るための勉強でもあるのです。
親として伝えたいこと
子どもたちはこれから大人になり、自分でお金を使うようになります。
スマートフォン一つで買い物ができ、会ったことのない人とも簡単につながれる時代です。
だからこそ、「お金は大切にしなさい」と伝えるだけではなく、「お金の話ほど、急いで決めてはいけない」「困った時には、一人で抱え込まなくていい」と伝えてあげたいと思います。
子どもをお金のトラブルから守るために必要なのは、怖い事件の話を聞かせることだけではありません。
「どんなことでも話していいよ」「失敗しても、一緒に考えよう」
そう言い続けることも、大切なお金の教育です。
もし誰かに、「絶対に得するよ」「今すぐ決めないと損をするよ」と言われたら、一度立ち止まる。
そして、「本当にそうだろうか」「なぜ、そんなに急がせるのだろう」「家族に話しても問題のない内容だろうか」と、自分で立ち止まって考えられるようになってほしいと思います。
大切なのは、心の中に生まれた小さな違和感に気づき、それを無視しないことです。
ただ、親としてもう一つ気をつけたいのは、自分の考えを一方的に押しつけないことです。
世の中は、私たちが子どもだった頃とは大きく変わっています。
新しい商品やサービス、働き方が次々と生まれる中で、親の経験や知識が十分に更新されていないこともあります。
自分が知らないからといって、すぐに「怪しい」「やめなさい」と決めつけてしまえば、子どもは次から相談してくれなくなるかもしれません。
頭ごなしに反対するのではなく、「これは、どういう仕組みなの?」「お金は、どこから生まれるの?」「困った時の問い合わせ先はあるの?」と、気になる点を伝え、子ども自身にも調べて確認してもらう。
そして親も、分からないことは一緒に調べてみる。
危険から守ることと、子どもが自分で判断する力を育てること。その両方を大切にしたいと思います。
一人で判断せず、誰かに相談すること。相談を受けた側も、決めつけず、一緒に考えること。
その積み重ねが、未来の自分を守る大きな力になります。
お金は、幸せに生きるための道具です。
道具に振り回されるのではなく、正しい知識を持ち、人とのつながりを大切にしながら、上手に使える人になってほしいと思います。
