私が子どもの頃、借金という言葉を聞くと、「何となく怖いもの」「してはいけないもの」というイメージがありました。
それは大人が何となく「ネガティブ」に取り扱い、詳しく説明をしてくれなかったからかもしれません。
けれど、大人の暮らしの中で、借金そのものは決して珍しいものではありません。
家を買うための住宅ローン。車を買うための自動車ローン。大学などへ通うための教育ローン。
多くの人が、こうした仕組みを利用しています。では、借金とは一体何なのでしょうか。
借金とは何だろう
簡単に言うと、借金とは、「未来に手に入る予定のお金を、今、先に使うこと」です。
たとえば、今は10万円を持っていないけれど、10万円の商品を買いたいとします。
そこで誰かから10万円を借り、「これから働いて、少しずつ返します」と約束する。これが借金です。
今の自分がお金を使い、その代金を未来の自分が払っていく仕組みだと考えると、分かりやすいかもしれません。
なぜ借金をするの?
借金と聞くと、悪いことのように思えるかもしれません。
けれど、借金がすべて悪いわけではありません。
たとえば、家を買う時。何千万円というお金を、一度に用意できる人はそれほど多くありません。
そこで銀行からお金を借り、毎月少しずつ返していきます。これが住宅ローンです。
学校へ通い、将来のために勉強するお金を借りる人もいます。これが教育ローンです。
今はまとまったお金がなくても、将来の生活や学びのために必要なものを手に入れられる。
そう考えると、借金が人生の助けになる場合もあります。
借りた金額より多く返す
借金について知っておきたい大切なことがあります。
それは、多くの場合、借りた金額だけを返せばよいわけではないということです。
お金を借りると、「利息」や手数料がかかることがあります。
たとえば、10万円を借りても、返す金額は10万円より多くなります。
お金を先に使わせてもらう代わりに、そのための費用も支払うからです。
借りる時には、目の前の商品価格だけでなく、「最後までに、全部でいくら返すのか」を確認する必要があります。
毎月の支払額が小さく見えても、支払いが長く続けば、合計金額が思っていた以上に大きくなることもあります。
問題は、返せるかどうか
借金を考える時に大切なのは、ただ「借りられるかどうか」ではありません。
きちんと返せるかどうかです。
今の自分に、返していく力があるのか。毎月の生活を続けながら、無理なく払えるのか。将来、収入が減ったり、思わぬ出費があったりしても返せるのか。
そこを考えずに借りてしまうと、生活そのものが苦しくなることがあります。
「貸してもらえる金額」と「無理なく返せる金額」は、同じではないのです。
返せなくなったら、どうなるの?
では、借りたお金を約束どおり返せなかったら、どうなるのでしょうか。
まず、支払いが遅れていることを知らせる連絡が届きます。
返すのが遅れたことで、もともとの利息とは別に、追加のお金を支払わなければならないこともあります。
返せない状態が長く続くと、「約束どおりに支払えなかった」という記録が残り、将来、クレジットカードを作ったり、新しくローンを組んだりすることが難しくなる場合もあります。
それでも支払いをせず、そのままにしていると、裁判所を通した手続きが行われ、場合によっては給料や銀行に預けているお金から回収されることもあります。
だからといって、返せなくなったら人生が終わるということではありません。
一番よくないのは、怖くなって連絡を無視し、誰にも相談せずに隠してしまうことです。
返すことが難しいと分かった時は、できるだけ早く家族や信頼できる大人、専門の相談窓口に相談することが大切です。
借金には返す責任があります。でも、困った時に助けを求めることも、自分の生活と未来を守るための大切な行動なのです。
「あとで払えばいい」が危ない
最近は、「今買って、支払いは来月」「何回かに分けて払えば大丈夫」という買い方も増えています。
カードやスマートフォンを使えば、財布からお札や小銭を出さなくても、簡単に買い物ができます。
とても便利ですが、便利だからこそ注意が必要です。
財布の中のお金が減らないため、お金を使った感覚が薄くなりやすいからです。
「まだお金は残っている」「このくらいなら大丈夫」と思って買い物を続けていると、あとから届く請求が増えてしまいます。
今は払っていなくても、支払いがなくなったわけではありません。
ただ、支払う時期を未来へ移しただけなのです。
未来の自分から借りている
私は、借金とは「未来の自分からお金を借りること」だと思っています。
今の自分は、欲しいものをすぐに手に入れられるかもしれません。でも、その代金を払うのは未来の自分です。
来月の自分。
来年の自分。
時には、何年も先の自分です。
未来の自分には、ほかにもやりたいことや必要な出費があるかもしれません。
それなのに、過去の買い物の支払いがたくさん残っていたら、自由に使えるお金は少なくなってしまいます。
借金をするということは、未来に使えるお金の一部を、今の自分が先に使うことなのです。
何かを買いたくなった時は、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
それは、今すぐ必要?それとも、ただ今すぐ欲しいだけ?
欲しいという気持ちだけで借りようとしているなら、少し待つという選択もあります。
毎月少しずつお金を貯めてから買う。本当に必要かどうか、時間を置いて考える。似たものを持っていないか確認する。
待っている間に、欲しい気持ちがなくなることもあります。お金を貯めてから買うことも、立派なお金の使い方です。
親として伝えたいこと
私は子どもたちに、「借金は絶対にしてはいけない」とは言いません。
借金が必要になる場面もありますし、上手に使えば、暮らしや将来を支えてくれることもあるからです。
でも、借りる前には、しっかり考えてほしいと思っています。
なぜ借りるのか。
全部でいくら返すのか。
いつまで払い続けるのか。
生活をしながら、無理なく返せるのか。
そして、本当に未来の自分に負担させてもよい買い物なのか。
借りたお金には、返す責任がついてきます。その責任を負うのは、ほかの誰かではなく、自分自身です。
今日からできること
何か欲しいものができたら、まず、「今持っているお金で買えるかな?」と考える。
買えないのであれば、「どうすれば貯められるだろう?」と考えてみる。
お小遣いを少しずつ残す。使わなくなったものがないか考える。買う時期を先に延ばす。
そうした経験は、大人になってからも必ず役に立ちます。
借金は、何もないところから突然現れる魔法のお金ではありません。未来のお金を先に使い、その後で返していく約束です。
だからこそ、今の気持ちだけではなく、未来の自分の生活まで考えて決める。
それが、借金と正しく付き合うために必要な力なのだと思います。
