「いつかは子どもが欲しい」
そう考えたとき、楽しみと一緒に浮かんでくるのが、お金のことではないでしょうか。
妊婦健診には、いくらかかるのか。出産するときには、どのくらいの支払いが必要なのか。赤ちゃんを迎えるために、何を準備すればよいのか。
調べてみると、さまざまな金額が出てきます。大きな数字を目にして、「自分たちに本当に育てられるだろうか」と不安になる人もいるかもしれません。けれど、妊娠から出産までに必要なお金を、すべて一度に用意するわけではありません。妊婦健診への公費負担や出産育児一時金、妊婦のための支援給付など、利用できる制度もあります。
まずは、いつ、何にお金がかかるのか。そして、どのような支援を受けられるのか。全体像から見ていきましょう。
※本記事は、2026年7月16日時点の公的資料をもとに作成しています。制度や支給条件は変更されることがあります。実際に利用するときは、厚生労働省、こども家庭庁、加入している健康保険、お住まいの自治体などで最新情報をご確認ください。
妊娠から出産までにかかる主なお金
妊娠が分かってから出産するまでには、主に次のようなお金がかかります。
– 妊娠を確認するための初診費用
– 妊婦健診や検査の自己負担分
– 出産する医療機関へ支払う費用
– 赤ちゃんを迎えるための準備費用
– 通院や里帰り出産に伴う交通費など
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会社員などで産休に入る場合は、支出だけでなく、休業中の収入がどう変わるのかも確認しておく必要があります。
妊娠を確認するための初診費用
市販の妊娠検査薬で陽性反応が出たら、産婦人科などを受診します。
医療機関では、超音波検査などによって妊娠の状態や妊娠週数を確認します。この時点では、自治体から妊婦健診の助成券をまだ受け取っていないことが多く、診察や検査の費用を自己負担することがあります。
金額は医療機関や検査内容によって異なるため、受診前に医療機関のホームページなどで確認しておくと安心です。
妊婦健診には公費の助成がある
妊婦健診では、妊婦本人の健康状態と、おなかの赤ちゃんの成長を定期的に確認します。
妊娠届を提出して母子健康手帳を受け取るときに、自治体から妊婦健診の受診券や補助券が交付されるのが一般的です。
2025年4月1日時点では、全国すべての市区町村で、14回以上の妊婦健診に対する公費負担が行われています。ただし、公費負担があるからといって、すべての健診や検査が必ず無料になるわけではありません。
助成の上限額を超えた場合や、助成対象外の検査を受けた場合には、自己負担が発生することがあります。
妊婦健診の回数や助成券について詳しくは、「妊婦健診にはいくらかかる?助成券でどこまで補える?」で解説しています。
出産費用の全国平均は約52万円
厚生労働省の「出産なび」によると、2024年度の正常分娩にかかる出産費用は、全国平均で約52万円でした。
ただし、この金額には、個室を利用した場合の室料差額や産科医療補償制度の掛金など、一部の費用は含まれていません。実際の支払額は、地域や医療機関、分娩方法、入院する部屋などによって変わります。
医療機関を選ぶときは、基本となる分娩費用だけでなく、次の費用も確認しておきましょう。
– 個室料金
– 無痛分娩の追加費用
– 休日・深夜の加算
– 入院日数
– 新生児に関する費用
– 予約金や前払金
出産育児一時金は原則50万円
公的医療保険の加入者や、その被扶養者が出産した場合には、子ども一人につき原則50万円の出産育児一時金が支給されます。
多くの医療機関では、健康保険から医療機関へ一時金が直接支払われる「直接支払制度」を利用できます。たとえば、出産費用が55万円であれば、原則として窓口で支払うのは50万円を超えた差額の5万円です。
一方で、出産費用が50万円以内に収まれば、申請によって差額を受け取れる場合があります。ただし、医療機関によっては予約金や入院保証金を先に支払うこともあります。出産育児一時金があるからといって、手元のお金がまったく必要ないとは限りません。
出産費用の内訳や直接支払制度について詳しくは、「出産費用はいくら?出産育児一時金と自己負担額」で解説します。
赤ちゃんを迎えるための準備費用
妊娠中には、出産費用とは別に、赤ちゃんを迎える準備も始まります。
肌着やおむつ、寝具、抱っこひも、チャイルドシートなど、必要になるものは少なくありません。ただし、すべてを新品で、一度に揃える必要はありません。
退院した日から使うものを優先し、ベビーカーなどは実際の生活に必要かどうかを考えてから購入してもよいでしょう。
レンタルや中古品、家族や知人からの譲り受けを利用すれば、費用を抑えられることもあります。準備するものと予算の考え方は、「赤ちゃんを迎える準備にかかるお金」で詳しく紹介します。
里帰り出産では、移動や二重生活にもお金がかかる
里帰り出産をする場合は、出産費用以外にも支出が増えることがあります。
たとえば、実家までの交通費、配偶者が訪ねるための移動費、自宅と実家の二重生活にかかる費用、荷物の配送費などです。
里帰り先では、住民票のある自治体から交付された妊婦健診の助成券を、そのまま使えない場合もあります。その場合は、いったん全額を支払い、後から自治体に助成分の払い戻しを申請することがあります。里帰りに伴う費用や手続きについては、「里帰り出産にはどんな費用がかかる?」で詳しく解説します。
帝王切開などでは健康保険を使えることがある
正常分娩は、原則として健康保険の診療対象ではありません。
一方、帝王切開など、医学的な処置が必要になった場合には、保険診療となる部分があります。
保険診療の自己負担額が一定の上限を超えた場合には、高額療養費制度を利用できる可能性があります。ただし、差額ベッド代や食事代、自由診療の費用などは対象外です。また、妊婦健診や出産に関する費用の一部は、医療費控除の対象となる場合があります。
この二つは別の制度です。
医療費控除については、「妊娠・出産費用は医療費控除の対象?」で解説します。
帝王切開などの医療費については、「帝王切開などで使える高額療養費制度」をご覧ください。
妊婦のための支援給付も受けられる
2025年度から、「妊婦のための支援給付」が法律に基づく制度として実施されています。
基本的な給付額は、次のとおりです。
– 妊娠届出時:妊婦一人につき5万円
– 妊娠後期以降:妊娠している子ども一人につき5万円
単胎妊娠の場合は、合計10万円が基本です。申請方法や給付時期などは自治体によって異なります。制度の対象や申請方法については、「妊婦のための支援給付とは?」で詳しく紹介します。
会社員は産休中の収入も確認しておこう
会社員などが出産のために仕事を休み、その間に給与を受け取れなかった場合には、加入している健康保険から出産手当金が支給されることがあります。
対象となるのは、原則として出産予定日以前42日から、出産日の翌日以後56日までの範囲で仕事を休んだ期間です。多胎妊娠の場合は、出産予定日以前98日からとなります。ただし、出産手当金は給与と同じ日に支払われるとは限りません。
産休に入ってから給付金が振り込まれるまでの生活費は、別に用意しておくと安心です。また、産休・育休中の社会保険料や住民税についても、あらかじめ確認しておきましょう。
関連記事
– 産休中にもらえる出産手当金
– 産休・育休中の社会保険料はどうなる?
– 育休中も住民税はかかる?
結局、いくら準備すればよい?
妊娠から出産までに必要な金額には、全国共通の答えがありません。出産する地域や医療機関、分娩方法、赤ちゃん用品の揃え方、里帰りの有無などによって大きく変わるためです。
まずは、次の項目を一つずつ確認してみましょう。
出産を希望する医療機関の費用:分娩費用に加えて、個室、無痛分娩、休日・深夜加算、予約金なども確認します。
自治体の助成や給付:妊婦健診の助成券や、妊婦のための支援給付について確認します。
加入している健康保険から受け取れるお金:出産育児一時金や、会社員などが対象となる出産手当金を確認します。
赤ちゃん用品や里帰りにかける予算:必要なものを一度に買うのではなく、出産前に必要なものと、後から買い足せるものに分けます。
給付金が入るまでの生活費:「受け取れる金額」と「振り込まれる時期」は別の話です。支給までの生活費を残しておきましょう。
出産費用の全国平均が約52万円で、出産育児一時金が原則50万円だからといって、2万円だけ準備すればよいということではありません。妊婦健診の自己負担、赤ちゃん用品、交通費、追加料金、収入の変化なども含めて、自分たちの場合に必要な金額を考えることが大切です。
大きな数字より、自分たちの場合を確かめよう
妊娠や出産には、確かにお金がかかります。けれど、すべての費用を一度に、自分たちだけで負担するわけではありません。公費による妊婦健診の助成や出産育児一時金、妊婦のための支援給付、出産手当金など、利用できる制度があります。
まずは、希望する医療機関の費用と、受けられる支援を調べてみましょう。
見えないままのお金は、大きな不安に感じます。けれど、必要な時期と金額が少しずつ見えてくれば、「分からない不安」は「今から準備できること」に変わっていきます。
妊娠や出産にかかるお金を知るのは、不安を増やすためではありません。新しい命を迎える日を、少しでも安心した気持ちで待つためです。
子どもの誕生は、家族にとってかけがえのない出来事であると同時に、これからの社会をつないでいく大切な希望でもあります。お金のことを一つずつ整えながら、これから始まる暮らしを、楽しみに思える時間も大切にしていきましょう。
参考にした主な公的資料
– 厚生労働省「出産育児一時金等について」
– 厚生労働省「出産なび」
– 厚生労働省「出産手当金|母性健康管理に関する用語辞典」
– 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
– こども家庭庁「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」
– こども家庭庁「妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施」
