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第1章‐10産休・育休中の社会保険料はどうなる?免除期間と手続き

産休や育休に入ると、給与や給付金だけでなく、毎月支払っている社会保険料がどうなるのかも気になるところです。会社員の給与から差し引かれる健康保険料と厚生年金保険料は、合わせると決して小さな金額ではありません。

「給与が出ない期間も、社会保険料を払い続けるのだろうか」
「免除を受けると、将来の年金が少なくなるのでは」

と心配になる人もいるでしょう。

会社の健康保険と厚生年金に加入している人が産前産後休業や育児休業を取得した場合は、事業主が手続きをすることで、一定期間の健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。本人負担分だけでなく、会社が負担する分も免除されます。

さらに、保険料が免除された期間も、将来の年金額を計算するときには、保険料を納めた期間として扱われます。

この記事では、産休・育休中に免除される社会保険料、免除期間の考え方、必要な手続きについて分かりやすく解説します。

※本記事は、2026年7月16日時点の制度をもとに作成しています。勤務先や加入している健康保険、働き方によって取り扱いが異なる場合があります。実際の手続きについては、勤務先の人事・総務担当者、健康保険組合、日本年金機構、市区町村などへご確認ください。

産休・育休中に免除される社会保険料

会社の社会保険に加入している人が産休や育休を取得した場合、免除の対象になるのは、主に次の保険料です。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料

40歳以上65歳未満の人が負担する介護保険料は、健康保険料とあわせて徴収されているため、健康保険料の免除期間中は介護保険料の負担も生じません。

免除を受けても、健康保険の資格がなくなるわけではありません。産休・育休中も健康保険へ加入した状態が続くため、医療機関を受診したときは、休業前と同じように健康保険を利用できます。

本人だけでなく会社の負担分も免除される

会社員の健康保険料と厚生年金保険料は、本人と会社がそれぞれ負担しています。産休・育休中の免除制度では、給与から差し引かれる本人負担分だけでなく、会社が支払う事業主負担分も免除されます。

本人の代わりに会社が社会保険料を立て替える制度ではありません。対象期間については、本人も会社も保険料を支払わなくてよい仕組みです。

免除されても将来の年金額は減らない

厚生年金保険料を支払わない期間があると、「将来受け取る年金が少なくなるのでは」と心配になるかもしれません。しかし、産前産後休業や育児休業によって厚生年金保険料が免除された期間は、保険料を納めた期間として扱われます。

休業前の標準報酬月額をもとに保険料を納めたものとして、将来の厚生年金額に反映されます。一般的な国民年金保険料の申請免除とは、年金額への反映方法が異なります。産休や育休を取ったことで、免除期間分の年金がそのまま減るわけではありません。

産休中はいつからいつまで免除される?

産休とは、産前休業と産後休業を合わせた呼び方です。社会保険料免除の対象となる産前産後休業期間は、原則として、

  • 出産予定日前42日から
  • 出産日の翌日以降56日まで

の間で、妊娠や出産を理由として仕事を休んだ期間です。双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は、産前98日前から対象になります。

社会保険料は日割りではなく、月単位で免除されます。産前産後休業を開始した月から、休業終了日の翌日が属する月の前月までが、原則として免除期間です。ただし、産前産後休業の終了日が月末の場合は、その月の保険料も免除されます。

産休の免除期間を具体例で確認

たとえば、産前産後休業の期間が4月20日から7月15日までだったとします。休業終了日の翌日は7月16日です。この場合は、4月から6月までの社会保険料が免除されます。7月は、休業終了日の翌日と同じ月になるため、原則として免除されません。

一方、産前産後休業が7月31日まで続いた場合は、終了日が月末になるため、7月分まで免除されます。産休の開始日や終了日によって、免除される月数が変わることがあります。

出産日が予定日とずれた場合

出産予定日より実際の出産日が遅くなった場合は、予定日から実際の出産日までの期間も産前休業に含まれます。反対に、予定日より早く生まれた場合は、実際の出産日をもとに産後休業の終了日が決まります。

そのため、出産前に社会保険料免除の手続きをしていても、実際の出産日によって産前産後休業期間が変わることがあります。その場合は、会社が変更の届出を行います。

本人が年金事務所へ変更手続きをするのではなく、出産日を勤務先へ正しく伝えることが大切です。

育休中も社会保険料が免除される

産後休業が終わった後、育児休業を取得する場合も、健康保険料と厚生年金保険料の免除を受けられます。

育児休業中の月額保険料は、原則として、育児休業を開始した月から、育児休業終了日の翌日が属する月の前月まで
免除されます。

たとえば、育児休業を7月10日に開始し、翌年4月15日に終了した場合、原則として7月分から翌年3月分までが免除されます。4月16日から復職するため、4月分の社会保険料は免除されません。

育休開始月の月末に休んでいれば免除される

育休中の月額保険料は、その月の末日が育児休業期間に含まれていれば、原則としてその月分が免除されます。

たとえば、6月25日から7月5日まで育休を取得した場合、6月30日は育休期間中です。この場合、6月分の社会保険料は免除されます。一方、7月は育休終了日の翌日も7月中にあるため、原則として7月分は免除されません。

同じ月の中で14日以上育休を取った場合

育休を開始した月と、育休終了日の翌日が属する月が同じ場合は、月末が育休期間に含まれていなくても、その月に14日以上の育休を取得すれば、月額保険料が免除されます。

たとえば、6月5日から6月18日まで14日間の育休を取得した場合です。6月30日はすでに復職していますが、同じ月の中で14日間の育休を取得しているため、要件を満たせば6月分の月額保険料が免除されます。

一方、6月5日から6月13日までの9日間だけ育休を取得し、月末にも休んでいない場合は、原則として6月分の免除を受けられません。この14日要件は、産後パパ育休など、比較的短い育休を取得するときにも関係します。

産後パパ育休も免除の対象になる

産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に、父親などが取得できる出生時育児休業です。産後パパ育休も、社会保険料免除の対象となる育児休業等に含まれます。月額保険料の免除要件は、通常の育休と同様です。

  • 月末が育休期間中である
  • 同じ月の中で14日以上育休を取得する

のいずれかを満たす場合は、その月の社会保険料が免除されます。

短期間の育休では、取得日数だけでなく、月末を含むかどうかによっても免除の可否が変わります。休業日を決めるときは、勤務先の担当者へ確認しておくと安心です。

賞与の社会保険料は条件が異なる

育休中に賞与が支給される場合、月々の給与にかかる社会保険料とは異なる条件があります。

賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料が免除されるのは、賞与を支給した月の末日を含み、連続して1か月を超える育児休業等を取得した場合です。月額保険料のように、「同じ月に14日以上休めば賞与保険料も免除される」という仕組みではありません。

たとえば、賞与支給月に20日間の育休を取得して月額保険料が免除されても、育休期間が連続して1か月を超えていなければ、賞与にかかる社会保険料は免除されません。

産休中については、社会保険料の免除期間内に支払われた賞与の保険料も免除されます。賞与の支給時期と休業期間が重なる場合は、給与明細だけで判断せず、勤務先へ確認しましょう。

社会保険料の免除に本人の所得制限はない

産休・育休中の社会保険料免除には、本人や配偶者の所得による制限はありません。

給与の高い人だから対象外になるという制度ではなく、健康保険・厚生年金の被保険者本人が、対象となる産前産後休業や育児休業を取得し、必要な届出が行われることが条件です。

また、産休・育休中に会社から一部給与が支払われる場合でも、正式に休業を取得し、免除要件を満たしていれば、社会保険料免除の対象になることがあります。出産手当金や育児休業給付金が支給されるかどうかとは、別の仕組みです。

手続きは勤務先が行う

会社員などの場合、本人が直接、年金事務所へ免除申請書を提出するのが一般的な手続きではありません。本人が勤務先へ産休や育休の取得を申し出た後、会社が日本年金機構へ必要な届出を行います。

産休の場合は、産前産後休業取得者申出書
育休の場合は、育児休業等取得者申出書

を、事業主が提出します。育休の申出書は、育児休業の開始前ではなく、原則として育児休業の開始後に提出します。日本年金機構は、育児休業期間中または休業終了後1か月以内を基本的な提出時期として案内しています。

会社が手続きを行う制度ではありますが、何もしなくても必ず自動的に免除されるとは限りません。産休や育休に入る前に、人事・総務担当者へ、「社会保険料免除の届出は会社で行ってもらえますか?」と確認しておくと安心です。

給与明細ですぐにゼロにならないこともある

社会保険料は、会社によって当月分を当月給与から差し引く場合と、前月分を翌月給与から差し引く場合があります。

そのため、産休に入った後の給与明細に社会保険料が記載されていても、免除対象外とは限りません。産休開始前の月の保険料を、翌月の給与から控除している可能性があります。

反対に、免除期間が終わった後も、給与計算のタイミングによっては、社会保険料の控除が一か月遅れて再開することがあります。明細を見て分からない場合は、

  • 何月分の社会保険料か
  • 免除の届出が済んでいるか
  • いつから控除が止まるか

を給与担当者へ確認しましょう。

社会保険料が免除されても住民税はかかる

産休・育休中に免除されるのは、健康保険料と厚生年金保険料です。次のようなお金まで、すべて免除されるわけではありません。

  • 住民税
  • 会社の社宅費
  • 財形貯蓄
  • 組合費
  • 団体保険料
  • 会社からの貸付金の返済

特に注意したいのが住民税です。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、産休・育休中に給与が減っても、すぐには安くなりません。

社会保険料がゼロになったからといって、給与明細や会社からの請求がすべてなくなるとは限らない点に注意しましょう。

育休から復帰して給与が下がった場合

育休から復帰した後、短時間勤務などによって給与が以前より少なくなることがあります。社会保険料は標準報酬月額をもとに計算されるため、手続きをしなければ、休業前の高い標準報酬月額がしばらく使われることがあります。

3歳未満の子どもを養育している人は、一定の条件を満たす場合、復職後の給与をもとに標準報酬月額を早めに見直す「育児休業等終了時改定」を申し出ることができます。

標準報酬月額が下がると、毎月の健康保険料と厚生年金保険料も下がります。ただし、標準報酬月額が下がると、通常は将来の厚生年金額にも影響します。

そこで、別の制度として用意されているのが、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。

復職後の給与低下から将来の年金を守る制度

3歳未満の子どもを養育している期間に、時短勤務などで標準報酬月額が下がった場合は、申し出により、子どもを養育し始める前の高い標準報酬月額を使って将来の年金額を計算してもらえることがあります。

これを、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置といいます。この制度を利用すると、

  • 毎月支払う社会保険料は、復職後の低い給与をもとに計算する
  • 将来の厚生年金額は、養育前の高い標準報酬月額をもとに計算する

という扱いが可能になります。育休中の保険料免除とは別の制度であり、原則として申し出が必要です。時短勤務で復職する人は、育休終了時改定とあわせて、勤務先へ確認しておきましょう。

配偶者の扶養に入っている人はどうなる?

配偶者の健康保険の被扶養者となっている人は、通常、自分で健康保険料や国民年金保険料を支払っていません。そのため、産休・育休による社会保険料免除の届出を行う必要は基本的にありません。

ただし、勤務先の社会保険へ本人として加入している人は、雇用形態がパートや契約社員であっても、免除の対象になる可能性があります。

自分が「被保険者本人」なのか、「被扶養者」なのかを、資格情報のお知らせやマイナポータルなどで確認してみましょう。

自営業・フリーランスの国民年金はどうなる?

自営業やフリーランスなど、国民年金第1号被保険者が出産した場合にも、産前産後期間の国民年金保険料免除制度があります。免除される期間は、原則として、

  • 単胎妊娠:出産予定月または出産月の前月から4か月間
  • 多胎妊娠:出産予定月または出産月の3か月前から6か月間

です。免除期間は、国民年金保険料を納めた期間として、将来の老齢基礎年金額に反映されます。会社員の社会保険料免除とは異なり、自分で市区町村や年金事務所などへ届出を行う必要があります。出産予定日の6か月前から届出が可能です。

国民健康保険にも産前産後の軽減がある

国民健康保険へ加入している出産予定者や出産した人については、本人分の国民健康保険料・保険税が一定期間軽減されます。対象となるのは、産前産後期間に相当する、

  • 単胎妊娠:4か月分
  • 多胎妊娠:6か月分

の所得割額と均等割額です。世帯全体の国民健康保険料がすべて無料になる制度ではありません。出産する本人にかかる保険料のうち、対象期間分が軽減される仕組みです。

手続き方法は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口へ確認しましょう。

2026年10月から国民年金の育児免除が始まる

2026年10月1日から、国民年金第1号被保険者を対象とする新しい育児免除制度が始まります。

対象となるのは、1歳になるまでの子どもを養育する自営業者、フリーランス、農業者、学生、無職の人などです。所得制限はなく、条件を満たせば実父母・養父母のどちらも対象になります。

免除された期間は、国民年金保険料を納めた期間として、将来の老齢基礎年金額に反映されます。実母については、産前産後免除期間に続く期間を含めて、子どもが1歳になるまでの範囲で免除を受けられます。

2026年10月より前に子どもが生まれている場合でも、制度開始時点で子どもが1歳未満であれば、10月以降の一部期間が対象になることがあります。

本記事の基準日である2026年7月16日時点では、まだ制度開始前です。対象となる人は、日本年金機構や市区町村からの案内を確認しておきましょう。

産休・育休に入る前に確認しておきたいこと

産休や育休中の社会保険料免除は、休業中の家計を支える大切な制度です。勤務先へ、次の点を確認しておきましょう。

  • 産前産後休業取得者申出書を提出してもらえるか
  • 育児休業等取得者申出書を提出してもらえるか
  • 何月分から社会保険料が免除されるか
  • 賞与の保険料は免除の対象になるか
  • 給与明細ではいつから控除が止まるか
  • 育休終了後、時短勤務を予定しているか
  • 育児休業等終了時改定を利用できるか
  • 養育期間の年金特例を申し出るか

勤務先が手続きをしてくれる場合でも、本人が制度を知っていることで、届出漏れや認識の違いに気づきやすくなります。

払わない期間ではなく、社会全体で支える期間

産休・育休中は、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分が免除されます。保険料を支払わなくても健康保険の資格は継続し、免除期間は将来の年金額にも反映されます。

これは、単に保険料の支払いを先送りする制度ではありません。新しい命を迎え、育てていく期間を、働く本人や家族だけに任せるのではなく、社会全体で支えるための仕組みです。

給与や給付金だけでなく、支払わなくてよくなるお金も分かれば、産休・育休中の家計をより現実的に見通せるようになります。利用できる制度を一つずつ確かめながら、出産後の暮らしに必要な準備を整えていきましょう。

参考にした主な公的資料

– 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
– 日本年金機構「産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」
– 日本年金機構「育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき」
– 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
– 厚生労働省「国民年金の産前産後期間の保険料免除制度」
– 日本年金機構「2026年10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります」

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