赤ちゃんが生まれ、産休から育休へ。
赤ちゃんと過ごせる大切な時間である一方、「しばらく給与がなくなって、生活していけるだろうか」と、お金のことが心配になる人もいるでしょう。
会社員など、雇用保険に加入して働いている人が一定の条件を満たして育児休業を取得すると、雇用保険から「育児休業給付金」を受け取ることができます。育休開始から180日目までは、原則として休業前の賃金の67%。181日目以降は50%です。
さらに、2025年4月からは一定の条件を満たした場合、子どもの出生直後の一定期間について13%が上乗せされ、合計80%となる「出生後休業支援給付金」も始まっています。
この記事では、
- 育休中はいくらもらえるのか
- 誰が対象になるのか
- いつからいつまで受け取れるのか
- 月給30万円ならいくらになるのか
- 給付金はいつ振り込まれるのか
- 育休中に少し働いたらどうなるのか
- 保育園に入れなかった場合は延長できるのか
を、順番に分かりやすく解説します。
※本記事は、2026年8月15日時点で確認できる厚生労働省の公表情報をもとに作成しています。2026年8月1日から育児休業等給付の支給上限額や一部の申請手続きが変更されています。実際の申請では、勤務先やハローワークで最新情報をご確認ください。
育児休業給付金とは?
育児休業給付金は、雇用保険に加入している人が、子どもを育てるために育児休業を取得したとき、休業中の生活を支えるために支給される給付金です。会社から支給される給与ではなく、雇用保険から支給されるお金です。
原則として、1歳未満の子どもを育てるために育児休業を取得した雇用保険の被保険者が対象となります。女性だけの制度ではありません。男性が育児休業を取得した場合も、条件を満たせば育児休業給付金を受け取ることができます。
父親が利用できる産後パパ育休や出生時育児休業給付金については、次の記事「父親が育休を取るときにもらえるお金」で詳しく解説します。
育休中にもらえる金額は、最初の180日間が67%
育児休業給付金は、育児休業を始めてからの日数によって支給率が変わります。
育休開始から180日目まで:休業開始前の賃金のおよそ67%
181日目以降:休業開始前の賃金のおよそ50%
です。「育休を半年取ると67%、半年を超えたら50%」と覚えておくと分かりやすいでしょう。ただし、正確にはカレンダー上の6か月ではなく、育児休業開始から180日で区切られます。
給付金はどう計算する?
育児休業給付金は、原則として次の式で計算します。
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
181日目以降は、
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
です。「休業開始時賃金日額」という言葉は少し難しく見えますが、原則として育休前の給与をもとに計算されます。基本的には、育児休業開始前6か月間に支払われた賃金の総額を180で割って算出します。
この賃金には、基本給だけでなく残業手当や通勤手当なども含まれますが、賞与は含まれません。出産した本人が産前産後休業から続けて育休に入る場合は、原則として産前産後休業に入る前の賃金をもとに計算されます。
月給30万円なら、いくらもらえる?
分かりやすく、育休前6か月の平均賃金が月額30万円だった場合で考えてみましょう。
最初の180日間
30万円 × 67%= 約20万1,000円/月
181日目以降
30万円 × 50%= 約15万円/月
が、おおよその目安です。厚生労働省も、育休前の平均月額が30万円程度の場合、最初の180日間は月額約20万1,000円、181日目以降は約15万円を目安として案内しています。同じように考えると、目安は次のようになります。
| 育休前の平均月額 | 180日目まで | 181日目以降 |
| 15万円 | 約10万円 | 約7万5,000円 |
| 20万円 | 約13万4,000円 | 約10万円 |
| 25万円 | 約16万7,500円 | 約12万5,000円 |
| 30万円 | 約20万1,000円 | 約15万円 |
| 40万円 | 約26万8,000円 | 約20万円 |
実際の支給額は、休業開始時賃金日額や育休中の給与の有無などによって異なります。
給付金には上限がある
「給料が高ければ、その67%をいくらでも受け取れる」というわけではありません。育児休業給付金には上限額があります。2026年8月1日から2027年7月31日までの支給上限額は、支給日数が30日の場合、
給付率67%:月額33万2,454円
給付率50%:月額24万8,100円
です。計算に使われる休業開始時賃金月額にも上限があり、2026年8月1日以降は49万6,200円です。
そのため、育休前の給与が50万円、60万円と高くても、それにそのまま67%を掛けた金額が支給されるわけではありません。なお、これらの上限額・下限額は毎年8月に変更されることがあります。
「67%しかもらえない」と考える必要はない
給与が30万円から20万1,000円になると聞くと、「収入が3分の1も減るのか」と心配になるかもしれません。ただし、給与と育児休業給付金では、税金や社会保険料の扱いが異なります。
育児休業給付金は非課税で、所得税はかかりません。翌年度の住民税を計算するときの所得にも含まれません。
また、一定の要件を満たして育児休業を取得している期間は、健康保険料と厚生年金保険料について、本人負担分・会社負担分ともに免除されます。
そのため、給与の額面と給付金の額だけを比較するより、実際の手取り額で比較すると差は小さくなります。
ただし、前年の所得に対する住民税は育休中も支払いが続くことがあります。この点については、第1章の記事「育休中も住民税はかかる?」で詳しく解説しています。
2025年から最大28日間「80%」になる制度も始まった
2025年4月から、新しく「出生後休業支援給付金」が始まりました。
一定の条件を満たして夫婦がともに育児休業を取得した場合などに、通常の67%の育児休業給付に、13%が上乗せされます。合計すると、67%+13%=80%です。支給されるのは最大28日間です。
育児休業等給付は非課税で、育休中の社会保険料も一定の要件で免除されるため、厚生労働省はこの80%を「手取り10割相当」と説明しています。
夫婦ともに14日以上休むことが基本
出生後休業支援給付金を受け取るには、原則として、夫婦それぞれが子どもの出生直後の一定期間に14日以上の育児休業を取得する必要があります。ただし、
- 配偶者がいない
- 配偶者が専業主婦・専業主夫
- 配偶者が自営業者やフリーランス
- 配偶者が産後休業中
など、配偶者が育児休業を取得できない一定の場合には、本人だけの育児休業でも対象となる仕組みがあります。
出産した母親の場合は、産後休業が終わった後の一定期間に14日以上の育児休業を取得することなどが条件になります。父親の場合の利用方法は、次の記事で詳しく整理します。
出産した母親の育児休業給付はいつから?
出産した本人の場合、出産直後から育児休業給付金が始まるわけではありません。まず、出産日の翌日から原則8週間は産後休業です。産前産後休業から続けて育児休業を取得する場合、育児休業給付金の育休開始日は、原則として出産日から58日目となります。
産休中については、勤務先の健康保険に加入する会社員などで条件を満たせば、「出産手当金」を受け取れます。イメージとしては、
出産
↓
産後休業:約8週間→ 出産手当金
産後休業終了
↓
育児休業→ 育児休業給付金
となります。出産手当金については、第1章の記事「産休中にもらえる出産手当金」で詳しく解説しています。
育児休業給付金はいつまでもらえる?
育児休業給付金は、原則として子どもが1歳になるまで支給されます。法律上の年齢計算の関係で、正確には1歳の誕生日の前々日までが通常の支給対象期間です。
ただし、1歳になる前に職場へ復帰すれば、その復帰日の前日までです。たとえば、子どもが10か月のときに復職した場合は、そこまでが育児休業給付金の対象となります。
条件を満たせば1歳6か月、2歳まで延長できる
保育園などへ入れず、育児休業を延長しなければならない場合など、一定の条件を満たすと、1歳6か月まで。さらに必要な場合には、2歳まで育児休業給付金の支給期間を延長できることがあります。
ただし、2025年4月から、保育園に入れなかったことを理由とする延長の確認方法が厳しくなっています。単に、「育休を延長したいので、とりあえず保育園へ申し込んでおこう」という申込みでは認められない可能性があります。ハローワークが、速やかに職場復帰するために保育所等を利用する意思があったかを確認します。
延長時には、
- 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
- 保育所等の利用申込書の写し
- 入所保留通知書や不承諾通知書など
の提出が必要になります。保育園への入園を考えている場合は、子どもが1歳になる直前になってから調べるのではなく、自治体の申込時期を早めに確認しておきましょう。
育休中に少し働くことはできる?
育児休業は、原則として仕事を休んで子どもを養育するための制度です。そのため、通常どおり働きながら育児休業給付金を受け取る制度ではありません。ただし、労使の合意によって、一時的・臨時的に働くことはあります。
育児休業給付金については、一つの支給単位期間に、就業日数が10日以下または、10日を超える場合でも、就業時間が80時間以下であることが支給要件の一つです。
恒常的に勤務するようになると、そもそも育児休業ではないと判断される可能性があります。
育休中に会社から給与が出ると給付額が減ることがある
勤務先によっては、育休中にも一部給与や手当を支給する制度があります。給与が出たからといって、必ず育児休業給付金がゼロになるわけではありません。ただし、育休期間を対象として支払われた賃金額によっては、給付金が減額されます。
一つの支給単位期間について、休業前賃金の80%以上の賃金が会社から支払われた場合、育児休業給付金は支給されません。80%未満でも、金額によっては給付額が調整されます。
会社に独自の育休手当などがある場合は、「会社の手当と育児休業給付金を合わせるとどうなるのか」を人事・総務担当者に確認しておきましょう。
正社員でなければ受け取れない?
育児休業給付金は、「正社員だけが対象」という制度ではありません。契約社員やパートタイマーなどでも、雇用保険に加入し、必要な条件を満たしていれば対象になる可能性があります。
基本的な受給条件の一つは、育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あることです。11日以上の月がない場合は、就業時間が80時間以上ある月で判定されます。
有期雇用の場合は、これに加えて、子どもが一定の年齢になるまでに労働契約が終了することが明らかでないことなどの要件があります。自分が対象になるか分からない場合は、勤務先かハローワークへ確認しましょう。
自営業・フリーランスは育児休業給付金の対象外
育児休業給付金は、雇用保険から支給される制度です。そのため、会社員などの雇用保険被保険者ではない自営業者やフリーランスは、原則として育児休業給付金を受け取ることができません。
ただし、2026年10月からは、国民年金第1号被保険者を対象に、子どもが1歳になるまでの一定期間について国民年金保険料を免除する「育児免除制度」が始まります。
自営業やフリーランスの場合は、会社員とは利用できる制度が異なるため、国民年金や自治体独自の子育て支援もあわせて確認しましょう。
育児休業給付金は自動的には振り込まれない
育児休業を取得しただけで、毎月自動的に給付金が振り込まれるわけではありません。育児休業給付金は、原則として勤務先を通じて、事業所を管轄するハローワークへ申請します。本人が希望すれば、自分で申請することもできます。
初回申請では、一般的に、
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・支給申請書
- 賃金台帳
- 出勤簿やタイムカード
- 母子健康手帳など出産を確認できる書類
などを使用します。多くの場合は会社側が必要書類をそろえて手続きを進めます。産休・育休へ入る前に、「育児休業給付金の申請は会社が行ってくれますか?」「初回の申請はいつ行いますか?」と確認しておきましょう。
給料のように毎月決まった日に入るとは限らない
育児休業給付金は、会社の給与のように「毎月25日」といった形で必ず振り込まれるものではありません。
申請書をハローワークへ提出し、審査・支給決定を経て振り込まれます。厚生労働省も、個別の具体的な支給日は事前には回答できないと案内しています。そのため、産休・育休に入った翌月から、毎月すぐ給付金が入ってくると考えて家計を組むのは避けた方が安心です。
最初の給付金が入るまでの生活費は、ある程度手元に用意しておきましょう。
育休前に「給付金が入らない期間」を考えておく
出産直後は、
- 出産費用の自己負担
- 赤ちゃん用品
- おむつやミルク
- 内祝い
- 通院費
- 住民税
などの支出が重なることがあります。その一方で、給与の支払いが止まり、出産手当金や育児休業給付金の入金を待つ期間が生じる可能性があります。家計を考えるときは、「最終的にいくらもらえるか」だけでなく、「いつ口座に入ってくるのか」まで考えておくことが大切です。
育休前に、少なくとも数か月程度の生活費について、すぐ使える預貯金で対応できるか確認しておくと安心です。
復職後に時短勤務をする場合にも給付がある
育休から復職した後、「フルタイムではなく、しばらく時短勤務にしたい」と考える人もいるでしょう。
2025年4月からは、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務をし、一定の条件を満たした場合に「育児時短就業給付金」を受け取れる制度も始まっています。原則として、時短勤務中に支払われた賃金の10%相当が支給される仕組みです。
2026年8月1日からは支給限度額も変更され、時短勤務中の賃金が48万4,121円以上の場合は支給されないなどの上限があります。
この制度については、0歳から2歳の保育や仕事復帰について扱う記事の中でも触れていきます。
育休中の収入は「給料の代わり」だけでは考えない
育児休業に入ると、毎月の給与は減ります。その数字だけを見ると、不安を感じるかもしれません。しかし、育休中には、
- 育児休業給付金
- 条件を満たした場合の出生後休業支援給付金
- 社会保険料の免除
- 児童手当
など、家計を支える複数の仕組みがあります。もちろん、育休前とまったく同じ収入になるわけではありません。だからこそ、
休業前の手取りはいくらか
育休中に入ってくるお金はいくらか
育休中も続く支払いはいくらか
を、一度並べてみることが大切です。「給料がなくなる」という一つの数字だけを見るより、家計全体を見れば、必要な準備額も分かりやすくなります。
育休は、収入が途切れるだけの時間ではない
育児休業は、働けないために仕方なく仕事を休む制度ではありません。生まれたばかりの子どもと過ごし、家族としての新しい生活をつくっていくための時間です。
その大切な期間を、「お金が心配だから、できるだけ早く復職しなければ」という理由だけで決めなくてすむように、育児休業給付をはじめとする制度があります。
制度を知ったうえで、半年休むのか。1年休むのか。夫婦で時期をずらすのか。二人とも一緒に休むのか。自分たちの暮らしや働き方に合った形を考えてみましょう。
子どもが赤ちゃんでいる時間は、長い子育ての中ではほんのわずかです。お金について前もって知り、準備できるところを整えておくことは、そのかけがえのない時間を、少し安心して過ごすための準備でもあります。
次の記事では、父親が育休や産後パパ育休を取得した場合に、どのようなお金を受け取れるのか、「父親が育休を取るときにもらえるお金」について詳しく解説します。
参考にした主な公的資料
– 厚生労働省「育児休業等給付について」
– 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~(令和8年8月版)」
– 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続(令和8年8月1日改訂版)」
– 厚生労働省「令和8年8月1日から支給限度額が変更になります」
– 厚生労働省「出生後休業支援給付」
– 厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き」
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