出産前後を実家で過ごし、家族の助けを借りながら赤ちゃんを迎える「里帰り出産」。
食事や家事を支えてもらえることは、心細くなりやすい産前産後の大きな助けになります。
その一方で、実際に準備を始めてみると、「帰省するだけだと思っていたけれど、意外とお金がかかる」と感じることがあります。
里帰り出産では、出産する医療機関へ支払う費用だけでなく、移動費や二重生活にかかるお金、妊婦健診の立て替えなども考えておかなければなりません。
この記事では、里帰り出産で発生しやすい費用と、事前に確認しておきたい手続きを整理します。
※本記事は、2026年7月16日時点の公的資料をもとに作成しています。助成内容や申請方法は自治体によって異なります。実際に里帰り出産をするときは、住民票のある自治体、出産予定の医療機関、加入している健康保険で最新情報をご確認ください。
里帰り出産でかかる主なお金
里帰り出産では、主に次のような費用が考えられます。
– 実家までの往復交通費
– 配偶者や家族が訪ねるための交通費
– 出産する医療機関への予約金や出産費用
– 妊婦健診を受けるために立て替えるお金
– 転院に伴う書類などの費用
– 実家へ渡す生活費
– 自宅と実家の二重生活にかかる費用
– ベビー用品や日用品の配送費
– 産後に赤ちゃんと自宅へ戻るための交通費
どのくらいかかるかは、実家までの距離や滞在期間、家族の行き来の回数などによって大きく変わります。
まずは、里帰り中の暮らしを具体的に思い浮かべながら、一つずつ予算に入れていきましょう。
往復の交通費は本人分だけではない
最初に考えたいのが、実家までの移動費です。
妊娠中に実家へ帰る交通費に加え、産後に赤ちゃんを連れて自宅へ戻る費用も必要です。
実家が遠方の場合は、配偶者が出産前後に何度か訪ねることもあるでしょう。本人一人分の往復交通費だけでなく、家族が行き来する費用も含めて考える必要があります。
新幹線や飛行機を使う場合は、荷物の追加料金や、駅・空港から実家までのタクシー代などがかかることもあります。
産後は赤ちゃんを連れて移動するため、出産前と同じ交通手段を使えるとは限りません。移動のしやすさを優先した結果、行きよりも帰りの費用が高くなることも考えておきましょう。
帰省するための交通費は医療費控除の対象外
妊娠中の通院費は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。
しかし、国税庁は、実家で出産するために帰省する交通費については、医療費控除の対象にならないと案内しています。里帰りするための新幹線代や飛行機代は、原則として自分たちで負担することになります。
一方、出産のため入院するときに、電車やバスなどの通常の交通手段を使うことが難しく、タクシーを利用した場合は、その費用が医療費控除の対象になることがあります。
里帰りのための移動と、医療機関を受診するための移動は、分けて記録しておきましょう。
実家に渡す生活費をどうするか話し合っておく
実家で過ごせば、宿泊費はかからないかもしれません。
ただし、滞在が長くなれば、食費、水道光熱費、日用品費など、実家の負担は増えます。
親から「お金はいらない」と言われることもありますが、里帰りする側として、生活費を渡すのか、食料品や日用品を購入する形にするのか、夫婦で考えておくとよいでしょう。
金額に決まりはありません。滞在期間や実家の状況、家事や育児をどこまで助けてもらうかによっても変わります。
お金を渡すかどうかだけでなく、
– 食事は誰が用意するのか
– 洗濯や掃除をどこまでお願いするのか
– 赤ちゃん用品をどこに置くのか
– 配偶者が泊まることはあるのか
といったことも、帰省前に話しておくと、お互いに気持ちよく過ごしやすくなります。
自宅と実家の二重生活にもお金がかかる
里帰り中も、自宅の家賃や住宅ローン、電気・ガス・通信費などは続きます。
配偶者が自宅で生活する場合は、自宅と実家の両方で食費や日用品費が発生することもあります。
普段は二人分をまとめて作っていた家庭でも、別々に暮らすことで食費が増える場合があります。外食や総菜の利用が増えることもあるでしょう。
里帰り出産の予算では、実家で使うお金だけでなく、留守にする自宅で必要となる生活費も忘れないようにしましょう。
ベビー用品を二重に買わないようにする
実家で産後しばらく過ごす場合は、おむつや衣類、寝具、沐浴用品などを実家にも用意します。
その後、自宅へ戻ってから同じものが必要になるため、何も考えずに購入すると、同じ用品を二重に揃えることになりかねません。
大型用品については、
– 自宅で使うものを実家へ送る
– 実家ではレンタルを利用する
– 使用期間が短いものは家族から借りる
– 消耗品だけ現地で購入する
など、使い分けを考えてみましょう。荷物の量が多ければ、宅配便の費用もかかります。
購入価格だけでなく、実家への配送費と自宅へ戻す費用まで含めて比べることが大切です。
里帰り先の医療機関は早めに確認する
里帰り出産では、妊娠中に通っている医療機関から、実家の近くにある医療機関へ移ることになります。
分娩予約の受付時期や、里帰り先で最初に受診する妊娠週数は、医療機関によって異なります。
医療機関によっては、早い時期に分娩予約が必要だったり、現在通っている医療機関からの紹介状や検査結果の提出を求められたりすることがあります。
里帰りを決めたら、次の内容を早めに確認しておきましょう。
– 分娩予約はいつまでに必要か
– 予約金や前払金はいくらか
– 何週までに里帰り先で受診する必要があるか
– 紹介状や検査結果が必要か
– 出産育児一時金の直接支払制度を利用できるか
– 無痛分娩などを希望する場合の条件と費用
– 出産後の健診をどこで受けるか
出産育児一時金は、子ども一人につき原則50万円です。
多くの医療機関では、健康保険から出産施設へ一時金が直接支払われる「直接支払制度」を利用できますが、利用できる支払方法は施設ごとに確認が必要です。
妊婦健診の費用をいったん立て替えることがある
妊婦健診の受診券や助成券は、住民票のある自治体から交付されます。
里帰り先の医療機関がその自治体と契約していない場合は、受診券を窓口でそのまま使えないことがあります。
その場合は、いったん健診費用を自分で支払い、後日、住民票のある自治体へ申請して助成分を受け取る「償還払い」が一般的です。
こども家庭庁の2026年公表資料では、里帰り先で受ける妊婦健診への公費負担は、全国すべての市区町村で実施されているとされています。ただし、助成上限額や申請手続きは自治体によって異なります。
助成が受けられる場合でも、健診当日は全額を支払わなければならないことがあります。
払い戻しまでの期間も考え、立て替えに必要なお金を手元に残しておきましょう。
領収書と未使用の受診券は捨てない
償還払いの申請では、一般的に次のような書類を求められます。
– 自治体所定の申請書
– 妊婦健診の領収書や明細書
– 母子健康手帳の該当ページ
– 使用できなかった受診券
– 振込先が分かるもの
たとえば大阪市や仙台市でも、領収書や未使用の助成券などの提出を求めています。
必要書類や申請期限は自治体によって異なるため、里帰り前に確認しておくことが大切です。
医療機関から受け取った領収書や明細書は、払い戻しが終わるまでまとめて保管しておきましょう。
出産後の健診も確認しておこう
里帰り先では、出産後に産婦健診や赤ちゃんの1か月健診を受けることがあります。
自治体によっては、産婦健診や新生児の検査にも助成がありますが、里帰り先で受診券を使えない場合は、妊婦健診と同じように立て替えと申請が必要になることがあります。
自宅へ戻る時期によって、健診を里帰り先と自宅近くのどちらで受けるかも変わります。
出産する医療機関に、「産後の健診は、いつ、どこで受けることになりますか」と確認しておくと安心です。
里帰り出産の予算は項目ごとに計算しよう
里帰り出産にかかる費用には、全国共通の平均額がありません。
実家までの距離や滞在期間、家族の支援状況によって違うためです。
次の項目を書き出し、自分たちの場合の金額を計算してみましょう。
移動にかかるお金:本人の往復交通費、配偶者や家族の移動費、駅や空港からの交通費を見積もります。
医療機関に支払うお金:出産費用の自己負担分、予約金、追加料金などを確認します。
健診の立替費用:妊婦健診、産婦健診、赤ちゃんの健診で、いったん支払う可能性がある金額を考えます。
里帰り中の生活費:実家に渡すお金、食費や日用品費、自宅に残る家族の生活費を考えます。
赤ちゃん用品の移動費:荷物の配送、レンタル、実家用に買い足す用品などを見積もります。
予備費:出産時期の変化や、予定外の移動・滞在延長に備えて、少し余裕を残します。分娩費用だけでなく、これらを合わせたものが、里帰り出産に必要な予算です。
家族の助けと費用の両方を見て決めよう
里帰り出産には、身近な家族に支えてもらえる安心があります。一方で、実家が遠ければ交通費がかかり、夫婦が別々に生活する期間も生まれます。
「実家ならお金がかからない」と考えるのではなく、どのような助けを得られ、そのためにどのような費用が必要になるのかを整理してみましょう。
里帰りをすることだけが、安心して出産するための方法ではありません。自宅で出産し、配偶者と役割を分担する方法や、自治体の産後ケア、家事支援などを利用する方法もあります。
大切なのは、周囲の期待ではなく、出産する本人が無理なく過ごせることです。
費用だけで決めるのでも、昔からの習慣だけで決めるのでもなく、自分たちの暮らしに合った方法を夫婦や家族で話し合ってみましょう。
参考にした主な公的資料
– こども家庭庁「母子保健に関する最近の動きについて」
– こども家庭庁「令和7年度 全国こども政策主管課長会議」
– 厚生労働省「出産育児一時金等について」
– 国税庁「医療費控除の対象となる出産費用の具体例」
– 大阪市「妊婦健康診査」「産婦健康診査」
– 仙台市「里帰り等健診・検査補助金交付申請」
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