バンクシー、1万円でオーナー 若者が生む小口投資の新潮流

1口1万円でバンクシー、1口10万円でランボルギーニ。アートや高級車の所有権を小口化して販売するサービスが若者から人気だ。少額投資非課税制度(NISA)の普及で手元のお金を投資に使うことに慣れ、投資商品に新たな分野を生み出しつつある。

「なかなか個人では所有できない。『オーナー権』として保有できるのは非常に素晴らしい」。都内の男性会社員は満足げだ。

バンクシーにバスキア、草間彌生まで
米画家のバスキアの作品が好きだが、代表作の価格はどれだけ安くても1000万円、高いと100億円する。とても手が出せる金額ではない。

利用したのがアートなどの小口販売を手掛けるAND OWNERS(アンドオーナーズ、東京・千代田)のサービスだ。

絵画の所有権を小口にしたオーナー兼を購入した。1口約1万円で3口買った。実物はアンドオーナーズが契約する美術品倉庫に保管され、年に1回程開かれるオーナー限定の展示会で鑑賞できる。

所有権を変える作品は幅広い。バンクシー(1口1万円から)から草間彌生(同)あで世界の絵が選べる。

オーナーの参加する総会で売却が認められたり、保有期間が終了したりすれば権利をオークションにかけられる。会員間の売買も出来る。

純粋な投資を目的にする購入も多い。腕時計などと並ぶ新たな実物投資だ。

国内のアート市場は拡大している。SBIアートオークション(東京・江東)によると、2024年の同社の競売落札金額は60億円にのぼった。

10年前の2014年(約9億円)の7倍だ。53%の落札者が40代以下だった。若年層の購入が目立つ。

アンドオーナーズも19年に2.5%だった顧客に占める20代の割合が足元で12.3%まで高まった。

20~40代の購入者は8割近くに達する。7割は初めてアートを購入した。

興味を持ちながらも高額すぎて手が届かないというアート投資の課題を小口化で解消した。

30代の購入者は「絵画購入の敷居がかなり下がった」と語る。

投資の対象h広がる。高級車などアート以外の資産も24年から取り扱いを始めた。イタリアの高級車、ランボルギーニなら2車種を1口10万円で購入できる。

芸術作品や高級車は株式市場と値動きの相関性が低い。株や債券以外に資金の振り向け先を分散するオルタナティブ(代替)投資としての価値もある。

アートは価格の変動が読みにくく、一般的に長期投資に向いている。アンドオーナーズの場合、オークションを通じて価格が購入時の4倍近くになった作品がある一方、会員間の短期間の売買で下がった絵画もある。

NISAや個人方確定拠出年金(iDeCo)の普及で手元のお金を投資に回す若者が増えた。小口化された投資商品が様々な分野で生まれ始めている。

不動産価格が高騰し、オフィスやマンションと言った不動産を小口化して賃料と売却益を分配する商品も感心が高まっている。

航空機の権利を小口化し、個人投資家がリース料を得られる商品も出てきた。初年度の利回りは6%を想定する。若者のお金を取り込む競争が激しさを増し、「お堅い」投資商品のイメージが変わりつつある。

参照:日本経済新聞


オルタナティブ投資

ランボルギーニに、小口で10万円投資して所有権の一部を得る。

今の20〜40才という年代で、スーパーカーのような嗜好品に、実は興味があったということに驚いた。

私は50才に近い年齢であるが、若い世代は、高級嗜好品に興味が無くなってきていると聞いていたし、実際に質問した場合でも、モノに興味が無いという意見が多かった。

だが、小口で商品化すれば購入するという実例から、実際には買えないから興味が無いと言っていたに過ぎないのだなと、改めて感じさせられた。

まぁ、高級車や高級時計を対象にした投資は話題にはなるが、日本におけるオルタナティブ投資の真髄とは言えない。

高級時計はスイス製品が対象だし、高級車はイタリア製品だ。

舶来品に弱いのは文明人の共通点だから仕方ないのだろうが、本来は日本のような長い歴史を誇る国にこそ、オルタナティブ投資は、最も相性の良い「投資の種類」と言えるのではないかと、私は考えている。

47都道府県に、それぞれ異なる素晴らしい文化品が、2685年という継続された王朝の歴史に守られ、今も輝き続けているからだ。

「オルタナティブ投資」という名称も、その本質を上手く掴めていないネーミングだと思ってしまう。

そもそも、オルタナティブとは、

「伝統的でない」

という意味だそうだが、

では、

「何的なんだ?」

と突っ込んでしまいそうになるのは私だけであろうか。

ちなみに伝統的な投資とは、株式投資のことを指すようだが、私から言わせれば、株式投資こそ400年そこそこの歴史しか持たない仕組みであり、2685年の日本文化を伝統的では無い投資方法と言うのだから、このような事実を踏まえると、「伝統」が何かから指摘したくなるところだ。

私が知る日本の金融機関で、オルタナティブ投資の商品開発に力を入れている企業がある。

その企業は、日本が誇る「投資」として、オルタナティブ投資のことを、

「邪馬台国投信(ヤマタイコクトウシン)」

と命名していたが、その内容も名前に負けず劣らず、日本各地の伝統工芸や、文化的な対象に投資できる仕組みになっており、金利と返礼品、そして投資する先の見学会を通して、日本文化に触れて感じられるという3つのリターンが用意されていた。

斬新であり、どこか懐かしく、ノスタルジックにすら感じられるもの。

かつて日本の携帯電話が、世界からガラパゴス携帯と揶揄された時代があったが、私達は気にも留めなかった。

日本人に合っていたからだ。

世界と足並みを揃える場面も必要だが、それ以外の面では違っていないとつまらないし、何より日本人だから、もしくは日本人にだけ響く何かが当然あるはずだ。

オルタナティブ投資を通じて、世界に誇る、日本のガラパゴス投資を創り上げてもらいたいものである。

大受  豊
大受  豊HIROUKE YUTAKA
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アジア圏を中心に、投資家として活動しております。私の投資信条は、誠実と成長の種に資金という名の水を注ぐことです!

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